学校の学期休みとなるといつもはバンコクか東京と決まっていたが、今回は事情があってオーストラリアにとどまることになった。色々とやることはあるが、それでも数日は「休暇」という形でパースの外に飛び出せる。
そして今は春、有名なワイルドフラワーの季節だ。
3泊4日の短い旅だが、それでも今まで行ったことのないMid Westという地域に行ける。
Mid West(ミッドウェスト)は西オーストラリア州の9つに分けられた地域のひとつで、パースを含むWheatbeltという地域のちょうど北に隣接している。特に1ヶ月ほどしか咲かない春のワイルドフラワーで全国的に有名な地域でもある。
目次
ハイウェイの迂回路に面したニュー・ノーシア
一気に行くには少々遠すぎるので、朝は早くから出発してニュー・ノーシアで観光することにした。ニュー・ノーシアはオーストラリア唯一のベネディクト修道院のある町で、パースから車で約1時間40分から2時間ほどかかる。
以前はグレート・ノーザン・ハイウェイに分断されていて、車の騒音とその速度が静かな修道院の町に似合わないものであったが、2017年にはバイパスが完成して町を迂回するようになった。前回この町を訪れたのは2015年だったので、今回初めて迂回路を利用して、なんだか以前と違うなと感じたのは間違いではなかったようだ。
下の写真は2015年当時のグレート・ノーザン・ハイウェイに分断された修道院前。
オーストラリアのロードトレイン(Road Train)として知られる大型トラックが修道院前を地響きをたてて通り過ぎるので、とても驚いたのを覚えている。
今では静かなもので、美しい建物をゆっくりと見学することができる。これは今では静かな迂回路の前に面しているビジター・センターとアートギャラリーのある建物で、元々は1847年に建てられた女子修道院だった。入口は裏に面していてそこから入場料を払ってアートギャラリーに進むことも、ツアーに参加することもできる。
ニューノーシアのツアーに参加
今回はちょうど学校の春休み最初の日曜日だったためか、ツアーの参加者は25人。かなり大人数だが、ガイドのよく通る声と様々な楽しい知識の披露でとても楽しい2時間のツアーとなっている。日差しが強いので日傘か帽子、そして日焼け止めは必需品だ。また、かなり歩くのでスニーカーなどの歩きやすい靴での参加が望ましい。
ツアー参加者たちにニュー・ノーシアの歴史を語るガイドのスー。1975年に結婚してからずっとニュー・ノーシアに関わってきたという。何人かガイドがいるようだが、おもしろくて貴重な話が聞けるのでやはりツアー参加は必須。
旧セント・ガートルーズ女学校。1992年に廃校になったが、その後は学校の修学旅行やキャンプなどに利用されている。
旧イルデフォンサス男子校。同じく1992年に廃校になって現在では学校のキャンプなどに貸し出されている。
ベネディクト修道院。今も10人の修道士たちがここに住み、祈り、働き、神に奉仕している。門は固く閉じられていて、とても静か。
ちょうど12時を過ぎていたので、祈りとランチの時間だとガイドが教えてくれた。彼らはその時間だけは修道士としての茶色の僧服を着用するが、普段はショーツにビーサンのひともいて、見ただけでは修道士だか庭師だかわからないこともあると言う。ビーサンの修道士…想像できないけれど、まあオーストラリアだし。
ベネディクト会は西暦529年に創立されたカトリック教会最古の修道会で、その厳格な戒律でもよく知られている。ビーサンにショーツは普段着として許されているのだろうが、戒律自体はとても厳しい。例えば、市井では会社の社長だったとしてもベネディクト修道士になるには、Stability(不変)、Obedience(服従)、Conversion(信者としてより良いひとへの回心)の3つには従わなければならないのだ。
1847年創立当時のニュー・ノーシアには70人ほどの修道士がいたそうだが、現在では10人がひっそりと修道院で暮らしている。そのほとんどが50代−60代で修道士としての道を選んだひとたちだ。現在では若い修道士として市井の生活なしで修道院にはいるひとは皆無らしい。
チャペルのミサでは彼らの修道士姿を見ることができるが、ミサは信者のためのものであって観光客のためのものではない。写真を撮ることや特にフラッシュなどをたくことは遠慮してほしい、とガイドも言っていた。
ビジターセンターとニュー・ノーシアのパン
ビジターセンターに入ると右側に受付があり、その左隣のドアがアートギャラリーへの入口だ。
入場料は、ツアーだけのものとアートギャラリーへの入場料がセットになったものがあるので、時間が許せばアートギャラリーへの入場も近辺の歴史を知るうえで大変おもしろいと思う。
受付の前は土産物屋となっており、様々な地元の民芸品、素朴なオーガニックの石鹸、本、宗教的なお土産などがあり、見ているだけでもおもしろい。
特に、修道院の中で真夜中に焼かれているパンは1840年代の製法を今でも固く守りながらつくられていて、パースでも有名だ。レンガを積み立てた窯で木材の薪を使っているので、噛みしめるとほんのりと木の香りさえする味わい深いパンだ。
観光客が多い日には午前中で売り切れてしまうと言う。1日1度しか作れないので、売り切れたらそれでオシマイなのだ。
以前はパースにもこのニュー・ノーシアとの契約でパンを売るベーカリーとカフェが併設されていたのだが、オーナーが倒産したため去年閉店してしまった。つまり、このパンを買うことができるのは、現在ではこのビジターセンターかロードハウスと呼ばれる近くの雑貨と食品の店だけだ。
今回はこれからの旅があるので、残念ながら買うことができなかった。
ニュー・ノーシアホテルのビールとランチ
ニュー・ノーシアホテルは、学校ができ始めた19世紀末には生徒たちを訪ねてくる保護者のための簡易宿泊所だった。ガイドの話では「バスルームもないし、食べるものも自分で調達しなければならないし、シーツも持参するほうがいいくらいのシロモノだったらしいので、とても現代人が泊まれるような設備じゃなかった」と言う。
1927年にはホテルとして大々的に改装され、レストランもできて今日の姿になった。お酒も飲めるけれど、もちろんオーストラリアの法律にのっとって18歳以上。若くみえるひとは必ず身分証明書の提示をもとめられるので、20代の日本人はかなりの確率でパスポートを見せなければならないと思う。
さて、レストランのメニューだが…去年から新しくなったそうだが、残念ながらわたしの注文したハンバーガーは美味しくなかった。どうやって作っているのか知らないが、まず肉がハンバーグじゃない。「たぶん牛肉がはいっている厚切りハム」と言うところか。それについているフライドポテトもカリッとしているわけではない。うーん…。ドラフトのサイダーは美味しかったけれどね。
近くにあるロードハウスでも簡単な食事がとれるそうなので、次回にはコチラを試してみたい。
旅の情報:ニュー・ノーシア
場所:パースから北東へ137km。所要時間は1時間半から2時間。
ホームページ:https://www.newnorcia.wa.edu.au/
ビジターセンター:毎日9時30分から4時30分まで。それ以外の時間でも町に入れるが、灯りもとぼしいのでオススメできない。周りは電灯もないので、漆黒の闇。わたしにはこんな場所で車の運転なんてできない。
チケット:アートギャラリーのみ 大人15ドル、子供(13歳まで)10ドル。アートギャラリーとツアーのセット 大人25ドル、子供(13歳まで)15ドル。詳しくは下記のリスト参照。
ツアー:毎日11時と1時30分の2回。所要時間は約2時間。
食事:ニューノーシアホテルのレストラン。メニューはこちら。またはキャンプ場に隣接したロードハウスでも簡単な食事ができるし、食料も買える。郵便局も兼ねているので絵葉書も出せる。有名なパンも買える。ガソリンも買える。ATMまである。つまり「なんでもショップ」。営業時間7時半から5時まで。
宿泊:ニューノーシアホテル。予約はhotel@newnorcia.wa.edu.au シングル80ドル、ダブル・ツイン100ドル、コンチネンタル・ブレックファストつき。またはロードハウスそばにはキャラバン用のキャンプ場もある。詳しくは、Roadhouse 08 9654 8020、またはNew Norcia Hotel 08 9654 8034に直接コンタクトすること。
町の地図:こちらからダウンロードできる。町の歴史については日本語のパンフレットもビジターセンターに置いてある。
ポイント:パースから2時間弱で着くので、車で行く日帰り旅行に最適。ただし、その2時間の間に全く何もない道がひたすら続くので水とちょっとしたスナックをお忘れなきよう。また帽子、サングラス、日焼け止めクリーム、日傘などの用意は紫外線の強い西オーストラリアでは必需品。