【西オーストラリア・ワイルドフラワーの旅】②:日曜日の晩に着いてはいけないミンゲニュー

さて、ニュー・ノーシアを発つとすでに時刻は2時半を過ぎている。急がないとミンゲニュー・ヒルからの夕暮れの眺めに間に合わない!というので出発。

 

Mid West(ミッドウェスト)の自然が延々と

何もないアウトバックの光景が延々と2時間以上続く。

実際電話も通じない。「SOS only」=警察だけは繋がる状態か、または「No connection」=警察どころかどこにも誰にも通じない状態、というのが交互にやってきてラジオもAMのみ。店やガソリンスタンドどころか、家さえ全くない。電気も通っていないらしい(=電線がない)。オーストラリア名物の羊の放牧もない。大体対向車さえ通らない。

こんな道をひたすら走ってきて…あれ?一体ワイルドフラワーはどこなんだろうと気づいた。写真では道の両脇に花々が見えるはずなんだけど。最新情報を得ようにも、まず電話が不通。つまりインターネットも使えない。今回ニュー・ノーシアまでは逐一Twitterで旅行の様子を書いてきたが、その後次の日の昼までパッタリと連絡が途絶えたのはそのせいだ。

でも、まあミンゲニューに着けば、ホテルでインターネットが通じるはず、と期待していたのだが…。

 

ミンゲニューの唯一のホテル:Mingenew Hotel

ということでMingenewに着いた…何にもない。
あとできちんと調べたら、人口280人の極小タウン。ホテルはひとつ、小さなスーパーがひとつ、パン屋がひとつ、そしてロードハウスと呼ばれる雑貨から何から一通り揃い、スナックも食べられる店がひとつ。これだけだ。近くにキャンプ場はあるが、今はあまり客もいないらしい。

そして不幸なことに、都会の生活に慣れたわたしには「日曜日だって何か開いているだろう」という場違いな考えがあったのである。日曜日の午後にはすべての店が閉まっている。開いているのはホテルのパブだけだ。

こちらがミンゲニューの主要道路。人影も車もない。
「ワイルドフラワーのカントリーを探訪できる町、ミンゲニュー」という看板が寂しい。ちなみに右に見えるのが今晩の宿、ミンゲニューホテルだ。

ホテルのパブ(兼レセプションらしい)で鍵をもらい、裏の別棟の部屋に行く。こんな感じ。

部屋は小さいし、かろうじてハンガーがかけられるステンレスパイプがあるだけで、服をかけるロッカーもない。何より困ったのがテーブルが全くないこと。つまり時計やアクセサリーやiPhoneなどを置く場所が床しかない。せめてバスルームにはと思ったら…うわ、こんな小さいシンクは初めて見た。わたしの手のひらの2つ分。歯ブラシや歯磨きクリームを置くスペースすらない。

一応パブのスタッフにWiFiカードをもらってきたが「たぶん通じないよ…」と言われていたので、もちろん通じなくても納得するしかなかった。なんということだ。

 

ミンゲニューの丘:雄大な景色…にはワイルドフラワーがない

荷物を置いて手を洗って、とりあえず日が沈む前にMingenew Hill(ミンゲニュー・ヒル」へ。パースで調べていたときには、花盛りの風景が広がる丘の上だ。

Mingenew Hillには車で行ける。もちろんアスファルト舗装はしていないけれど。
そして、登ってみてその雄大な景色には圧倒された。オーストラリアって広いんだなあ、という実感。

所々にある黄色い花はワイルドフラワーだが、名前がわからない。そして、そのポツポツと咲く花以外には何もなく、眼下に広がる雄大な眺めの中には、ネットの写真にあった「美しく広がる黄色い絨毯」もなかった。

あとでホテルで訊いてみると、「今年はワイルドフラワーの咲くのが早くてねえ…9月半ばには咲き切ってしまったかな」とのこと。ええ〜…。まさかこんなに早くワイルドフラワーの季節が終わってしまうなんて。だから、ミンゲニューに来る道沿いにも何もなかったのか。

 

ホテルディナーは…セルフサービスだった

そのあとホテルに戻ってから、「パブのテラスではWiFiが通じているはず」と言うパブのバーテンの言葉を信じて、ビールを飲みに行った。しかし、その「テラス」でもネットには繋がらない。「繋がらないんだけど」と言うと、彼は肩をすくめただけだった。明日次の町に着くまで、外界からは遮断されているというわけだ。

トイレの並んだ隣の小さいテレビの周りで、わっと歓声があがった。皆椅子を並べて日本で開催されているラグビーのワールドゲームを見ているのだ。

宿泊客も何人かいたようだが、それでもビックリするほど何もない。
夕飯はここで摂るしかないのでメニューを見た。女性トイレと男性トイレの間には小さな黒板があってそこに「本日のスペシャル」が。

豚肉か牛肉のロースト、野菜付き。どこがスペシャルなんだよ…。だって、メニューはこれだけなのだ。それもカウンターで料金を払ったら、自分でとりに行くセルフサービス。学食みたいだ。

そのローストディナーは、ホテルのダイニングルームの隅に置かれたビュッフェでスタッフが注文(つまり牛か豚かだけだが)を言うと、それを皿に盛って最後にたっぷりとソースをかけてくれる。そのソースの量が尋常じゃなく、肉や野菜が浮くほどだったので「肉だけにほんの少し」と言ってやっとこのぐらいの量にしてもらった。ほかのひとたちの皿を覗いたら、もう肉だか野菜だかわからなくなるほど所狭しとソースがかけられていたので。

ものすごく安い肉を低温で何時間もかけて焼くと、このぐらいの柔らかさになる。つまりわたしが作るローストポークのように「切り身」にできる肉ではなく、焼き崩れているのでこんなふうな「割いた肉」になるのだ。それなりに食べられるけれど、可もなし不可もなしというところか。量は3人分ぐらいあるので、わたしは日本人としては大食らいの範疇に入るのに、なんと半分ぐらいしか食べられなかった。

もう少しビールを飲んで、やっと8時。部屋にはテレビもないので、皆その皿を持って「テラス」のテレビの周りに集まっている。ダイニングルームのテーブルはふたつしか埋まっていない。

仕方なく、早く寝て明日は早く起きようということになり、部屋へ。
夜になったら、部屋の外はもっと寂れて見える。そして、真っ暗だ。漆黒の闇だ。でも星だけは沢山あって、空を見上げるとプラネタリウムみたいだった。

 

旅の情報:ミンゲニュー

ワイルドフラワーの季節以外は何もないが、少なくとも自然が満喫できる。ただし、普通の携帯では通じないので、必ず大手1番のTelstraのSIMカード購入をオススメする。Telstraなら、わたしが持っているOptusなどでは「SOS only」と表示される地域でも通じる。ただし、「No connection」と表示されている場合はどんな携帯でも圏外だ。あなたが「衛星通信用の携帯」を持っているなら別だが。

ワイルドフラワーの季節にはミンゲニューのホームページで見られるような美しい景色が楽しめる。が、わたしのようにそのワイルドフラワーが咲いているのかどうか確かめもせずに旅行に出てしまうと、間違いが多い。必ず『咲いているかどうか」パースを出る前にインフォメーションで確かめたほうがいい。9月半ばなら確実らしいが、天候にも左右される。

インフォメーション:ホテルでさえWiFiも電話も繋がらないので、パースにいるときに必ずコンタクトしておくこと。
ホームページ:https://mingenew.wa.gov.au/
住所:21 Victoria Street Mingenew WA 6522
電話:
(08) 9928 1100
Email: enquiries@mingenew.wa.gov.au

店の情報
Mingenew IGA(スーパー)月〜金は8AM – 6PM、土曜日は7:30AM – 12PM、日曜日は9AM – 12PM。(08) 9928 1780
Palm Roadhouse(雑貨屋兼カフェ)月〜金は6AM – 5PM、土曜日は6AM – 12PM、日曜日は7AM – 1:30PM。(08) 9928 1118
Mingenew Bakery(パン屋)月〜金は6AM – 4PM、土曜日は6:30AM – 2PM、日曜日休み。(08) 9928 1104

宿泊
Mingenew Hotel 電話 (08) 9928 1002、メール mingenewhotel@bigpond.com
キャンプ場あり。Mingenew Spring Caravan Park (08) 9928 1019 cvbafarr@bigpond.com
他にもキャンプ場があるが、電話もメールも記載されていない。つまり、行きあたりばったりである。必要最低限の設備はあるが、あとは自分で用意していくのが必須。

観光
Mingenew Hill (ミンゲニュー・ヒル)丘に登ると絶景。ワイルドフラワーがなくても美しい。
Mingenew Museum(美術館)7月15日から9月27日まで、月・水・金10am-1pm。つまりわたしがいたときはちょうど閉館になった時期。